【01】 告白 -- 65word
「す」の形に開いた口をオレは咄嗟に手で塞ぐ。その後に続く言葉は知っている。
「言わせろよ」
言わせるか。それは最初の一度に意味がある。
(相手自由:「す」の次に来る言葉は多分「き」)
【02】 嘘 -- 65word
「おねしょしたのはオレじゃないよ!」
「ふぅん。でもモクバ、昨日オレのシーツは青でお前は白だったよな」
「あ」
「正直に、白状して来い」
(モク瀬人:施設にて。犯人は勿論モクバ)
【03】 卒業 -- 65word
テレビの中で卒業証書を掲げ楽し気に笑う同級生達。
それを遠目で眺めつつオレはじきに来る商談相手とどう戦うか、そればかりを考えていた。
(瀬人:社長の中学卒業の日)
【04】 旅 -- 65word
「な、旅行しようぜ。何処に行きたい?」
「何処でもいいのか?」
「うん」
「宇宙」
「はぁ?」
「行っていない所はそこだけだ」
「ちょ、無理」
(城海:多分、そうなのかなーと思って)
【05】 学ぶ -- 65word
センセイの声に合わせて全員一斉に頁を捲る。来週はテストで、皆必死の形相だ。…隣の男を除いては。
「教科書見ろよ」
「全部頭に入ってる」
(城海:社長はスーパー高校生)
【06】 電車 -- 65word
満員電車。ぎゅうぎゅう詰めの車内で扉を背に涼しい顔で立ち尽くす男が一人。
苦しくないってお前なぁ!前に立って犠牲になってるのは誰よ?
(城海:仲良く電車通学。……多分ないけど)
【07】 ペット -- 64word
首に繋がる鎖が音を立てる。
喉元を拘束する首輪を嵌めるオレはペットの犬猫と変わりがない。
だが、撫でる手の変わりに襲い来るのは鞭の音。
(瀬人:愛玩動物にすらなれない哀れな子供)
【08】 癖 -- 65word
両手が開くと奴は必ず腕を組む。
長身と相まって酷く尊大な態度を作り出すそのポーズは、過去身を縮めて耐えていた故の反動だと誰かが言う。
(瀬人:語り手不明。まさに社長ポーズ。腰が心配です)
【09】 おとな -- 65word
「大人とは、どんなものだ?」
と古代の王は尋ねてくる。
しかしオレが答えた所で奴は永遠にその感覚を知る事は出来ない。
酷く空しい問答だ。
(闇海:ティーンな社長はまだ大人じゃない)
【10】 食事 -- 65word
肉まん3つとコンビニおでん。カロリーメイトと栄養ドリンク。
その二つを間に挟んで「なんだその粗末な飯は」と言い合う二人は似た者同士。
(城海:語り手不明。こういう風景ちょっと見てみたい)
【11】 本 -- 65word
「なあ、何読んでんの?」
「煩い。それに説明すると長くなる」
「一応教えろよ」
「昔々ある所に」
「…馬鹿にしてるだろ」
「だから黙ってろ」
(城海:とりあえず表紙の文字が読めない洋書)
【12】 夢 -- 65word
真っ白な画用紙に描けと言われた「自分の夢」。
描ききれないと答えたら教師の口角が僅かに上がった。
それから10年、その夢はもう手中にある。
(瀬人:社長は夢を実現する男)
【13】 女と女 -- 65word
何時の間にか眼前に二人の女が立っていた。
奴らは突然オレにどちらが好きかと訊ねてくる。
オレは即座に人間には興味がないと答えてやった。
(瀬人:だって嫁はブルーアイズだもん)
【14】 手紙 -- 65word
大事にしている物は?と聞かれた。
「にいさまがんばって」と拙い字で文字が書かれた一枚の便箋と偽カード。
それが今のオレを支えている。
(モク瀬人:絶対ブルーアイズより大切にしてる)
【15】 信仰 -- 65word
「ああ、神様」
オレが密かに呟くと隣の男が白紙の小切手を差し出した。
「神に祈る位ならオレに祈れ」
そうにやりと笑う顔は神よりも美しい。
(城海:女王様社長。なんと言ったらいいのやら・笑)
【16】 遊び -- 64word
「オレが言う遊びって言うのは、例えばゲーセンに行ったり、遊園地に行ったり…」
「だが、最後はセックスだろう?」
「…まあそうだけど」
(城海:この二人は何をやってもシメは同じ)
【17】 初体験 -- 65word
硝煙の匂いが辺りに立ちこめトリガーに触れる指が震えた。銃弾は中心を的確に捉えている。
「始めてなのに筋がいい」
次の的は貴様の頭だ。
(瀬人:殺人はやめてね、社長)
【18】 仕事 -- 65word
偽の笑顔を作り心にも無い世辞を述べて、触りたくも無い手を触る。
「そんな言い方すんなよ」
どんな仕事と聞くからそう答えた。何が悪い。
(城海:社長、ちゃんとやれてるのかな)
【19】 化粧 -- 65word
所詮は化けの皮。洗えば落ちる紛い物。
ルージュに彩られた口元を眺めながら艶めく赤を凝視する。
気味が悪い。密かにそう呟いて背を向けた。
(瀬人:多分何かのパーティにて。酷いですな)
【20】 怒り -- 65word
みし、と顔横の壁が嫌な音を立てた。
めり込んだのは相手の拳。腕は微かに震えている。見下す瞳には青の焔。
理由が分からない。何故、突然。
(相手自由:社長の怒りのツボってなんなのかな)
【21】 神秘 -- 65word
眼前で吼える蒼き瞳の白き竜。空に眩く輝くその姿こそ、この世で一番の神秘。
それを見あげるその眼差しも、同じく神秘なのかもしれない。
(ブルーアイズと瀬人:語り手不明。二人で一つの美しさ)
【22】 噂 -- 65word
余りにも露出が少ない服装に、様々な憶測が飛び交っている。
「…一度脱いだ方がいいんじゃね?もしかして…」
「男だからな」
あ、超不機嫌。
(城海:いや、胸はないからね・笑)
【23】 彼と彼女 -- 65word
古い写真の中の男女。
女は兄に男はオレに似ている。オレにはどちらの記憶も無い。
けれど抱き締めてくる兄の腕に酷く懐かしさを感じるのだ。
(モク瀬人:見知らぬ本当の父様母様)
【24】 悲しみ -- 64word
母が死んだ時は良く分からなかった。
父が死んだ時は絶望した。
そして義父が死んだ今胸に空虚な穴が開いた。
何も感じない。それが悲しい。
(瀬人:呆然と立ち尽くす社長)
【25】 生 -- 65word
醤油ご飯一週間。卵一個で三日間。風呂は勿論電気すらない。
「凄まじいな」
「オレの生は戦いだ」
「…特別に褒めてやろうか」
「嬉しくない」
(城海:頑張れ城之内)
【26】 死 -- 65word
それは敗者の末路だ。そんな義父の教えを信じ、命を懸けた。
だがオレはまだ生きている。
敗北を決めるのは自分自身だとあの男が笑ったから。
(闇海:命のチップは一枚きり)
【27】 芝居 -- 65word
「貴様と堕ちるなど真っ平御免だ」
「何故」
「憎いからだ。貴様など」
「こんなに芝居の下手な奴は見た事無いぜ。せめて泣かずに言ってみろ」
(闇海:社長は涙腺が脆いといい)
【28】 体 -- 65word
世の中にこれ程汚いものはないと彼は嘲笑った。
無駄なものが何一つ無い、完璧な造形。
これが汚いというのなら、美しいものなど何もない。
(相手自由:世界一の惚気話)
【29】 感謝 -- 65word
小さな手は救いだった。
仄かな温もりは支えだった。
眩しい笑顔は力になった。
お前が弟で本当に良かった。いつも言いたくて、言えない言葉。
(モク瀬人:弟が命よりも大切です)
【30】 イベント -- 65word
無機質な机の上に小さなケーキが1欠片。
「何の真似だ」
「恋人記念日」
「誰と誰の」
「お前とオレの一周年」
「長かったな」
「まだ一年だぜ」
(城海:さて、何年続くのかな)
【31】 やわらかさ -- 65word
同じ男なのに不公平だ。
しっとりと吸い付く様な余りにも気持ちがいいその唇。
ついキスしたくなるのはその所為だ。
だからそんなに睨むなよ。
(城海:段々馬鹿ップルになってきた)
【32】 痛み -- 65word
まるで焼けた火箸を押し当てられた様な酷い熱さを感じた。
落ちるナイフと流れ出す血液。
他の感覚は無かった。
慣れ過ぎて、もうわからない。
(瀬人:社長、何度目かの襲撃の巻)
【33】 好き -- 64word
幾度言われてもその意味が分からなかった。
全て馬鹿の世迷言だと思っていた。
けれど最近、その言葉が耳障りではなくなった。
何故だろう?
(瀬人:そりゃきみが好きだから)
【34】 今昔 -- 65word
「最初はなんつーか、キモかった」
(……キモ?)
「でも今はヤバイと思う」
(ヤバイ?)
「お前って変だよな」
「言いたい事はそれだけか!」
(城海:そう思っていた時期が私にもありました)
【35】 渇き -- 65word
その横顔をみていると喉が渇いた。
けれど、それは水を飲んでも満たされない。
当然だ。渇いているのは喉じゃなく…。
後5秒で手を伸ばそう。
(城海:城之内くん、MAJIでヤる気の5秒前)
【36】 浪漫 -- 65word
「超豪華なお屋敷で〜周りに美女を侍らせて〜目の前には山ほどのご馳走!」
「それで?」
「おしまい」
「…………」
「哀れまないでくれる?」
(城海:城之内、男の浪漫を力説する)
【37】 季節 -- 65word
空から白い雪が降ってくる。
ジングルベルの音と共に街に笑顔が溢れ始めた。
それを遠目で眺めつつ、今年の流行を模索する。
勝負はこれから。
(瀬人:社長の季節感覚ってこんなもん)
【38】 別れ -- 65word
「どんな女?」
「黒髪色白。清楚で淑やかなお嬢様だ」
「オレと正反対じゃん」
「そうだな。…何かないのか」
「結婚おめでとう。…幸せにな」
(城海:一度は書きたい結婚エンド)
【39】 欲 -- 65word
好きとか嫌いとか男とか女とか、そんなのはどうでも良かった。
ただ目の前にあるその身体を、自分のものにしたかった。
最低だと罵られても。
(城海:若さってそういうもんだよね)
【40】 贈り物 -- 65word
「母様の分も大事にしてね、瀬人」
そう言って母がオレに預けたのは、弟だった。
「うん。一生、大切にする」
貴女がくれた…最期の贈り物を。
(瀬人:その言葉は、命を懸けた誓いになる)