不良城之内×初期海馬

「海馬ってさ、なんで髪が緑なんだ?突然変異?」
「……さぁ。ボクが自分の意志でした事以外の事象を問われても困るんだけど。でも、どうして今そんな事を聞くんだい?」
「うん?ふと思ったから。顔は真っ白だしさぁ、目は金色だろ?もしかしたら宇宙人かなって」
「そうだったらどうする?」
「へ?」
「ボクが本当に異星人で、地球に送り込まれた刺客だとしたら、君はどうする?ボクを殺すの?」
「……うーん。どうだろ。世界規模でこられたらオレにはどうしようもねぇからな。ほっとくさ」
「……地球の救世主になりたいとは思わないんだね」
「あ、オレそう言うの興味ねぇから。あんまデッカイもん背負いこむと潰れちまう。オレが背負えるのは精々血の繋がった家族と、親友だけだ。後は結構どうでもいい」
「ふぅん」
「で、実際はどうな訳?」
「……どうって、ボクは両親は至って普通の地球人であり、ごく一般的な家庭に育った、尤も基本的なA型を持つ国籍上は日本人だよ。尤も血は常人より薄いんだけどね。でも色は赤いよ。見てみる?」
「や、別にいいや。人間なら。……人間じゃなくっても、別にいい」
「いいのか」
「ああ。怖さややっかいさで言ったら人間の方が面倒な事、あるもんな」
「それはそうだね」
「オレさ……実は宇宙人に憧れててよ。いつか地球を脱出したいって思ってんだ」
「……意外だね」
「だからてめぇが宇宙人だったらいいなーってちょっと思っただけ」
「ごめんね。期待に応えられなくて」
「ま、しょーがないよな」
「君がそんなに宇宙に行きたいなら、地球人のボクでも連れて行ってあげられるよ。今度脱出してみようか?」
「うぇ?マジで?!」
「まぁでも、脱出しても行きつく所がないんだけどね。今の科学技術ではまだ他の惑星で暮らせる術がない」
「あーそっかぁ。そうだよなぁ」
「……君って変な奴だね」
「てめぇには言われたかねぇよ、宇宙人。オレぁ至ってまともな人間だぜ」
「ボクに構う時点でまともじゃないと言ってるんだけど」
「その辺はお互い様だろ。オレにだって普通の人間は近寄らねぇよ」
「確かに、まともな『おともだち』はいないみたいだけどね」
「似た者同士ってヤツ?結構居心地良いんだぜ。たまーに背中んとこがムズ痒くなるんだけどよ。血ぃ見ない日が続くと苛々する。煙草切れた時みてぇに」
「そうなんだ」
「てめぇにはそういうのねぇの?超ド級のブラック企業の社長さん?」
「ボク?ボクはそんな悪い習慣は身につけていないよ。至って毎日平穏さ」
「そういやー昨日童実野埠頭でコンクリが詰まったドラム缶二個が上がったっつってたけどー」
「へぇ、そうなんだ。ニュースを見ていないから分からなかった」
「こないだ真夜中に冬の海を見に行くとかメール寄越したよな」
「そうだっけ?結局ボクは行かなかったんだけどね、寒くって。今も凄く寒いんだ。今の季節は屋上にいるのは厳しいね」
「なぁ、海馬」
「何?」
「てめぇ、やっぱり宇宙人だろ?そろそろ自分の星に帰れば?」
「その時は君も一緒だよ。城之内くん?出たいんだろう?この星を。この、つまらない日常から」
「ああ」
「素直だね」
「アンタは素直じゃねぇな」
「ごめんなさい、って謝っても許して貰えた試しがないから。謝らない事にしたんだ」
「何にだよ」
「それは君が一番良く分かってるんじゃないのか?」
「……ドラム缶、お前がやったのか?」
「『ボクは』やってないよ」
「あっそ」
「ねぇ、城之内くん。今更根本的な事を言う様で悪いけど、地球人だって宇宙人のくくりに入るんだよ?」

01.宇宙人的非日常