不良城之内×初期海馬

「てめ、昨日女といたろ」
「何の話?」
「とぼけんじゃねーよ。隣町の駅前のホテルの裏で突っ立ってたろうがよ」
「……ああ。そう言えばそうだった。うん、いたよ」
「いたよ、じゃねぇ。年上のケバイ女誑かして何やらかしてんだっつってんの」
「人聞きが悪いなぁ。そんな事してないよ」
「嘘吐け。この淫乱男」
「昨日の彼女は唯の取引相手だよ。会談は何も社や料亭だけでするものじゃないだろう?」
「ホテルのレストランとかで見かけたんならんな事言わねーよ。なんで裏だよ」
「人の行動にいちいち目くじら立てないでくれないかな。君だって裏が好きじゃないか」
「喧嘩を表でやったらおかしいだろうが!屁理屈捏ねんな!」
「いや、立派な理屈だね」
「馬鹿じゃねぇの。……って、今てめぇ墓穴掘ったな」
「何」
「オレが裏が好きなのと、てめぇが裏を利用する理由がおんなじなら、結局イカガワシイ事があるって事じゃねーか」
「……どうしてもボクにいかがわしい事をさせたいんだね、君」
「させたいんじゃなくっててめぇがしてんだろうが」
「だからしてないって言ってるじゃないか。昨日のアレは彼女を送っていただけだよ。時間だってまだ早かっただろう?」
「時間なんて関係ねーだろ。てめぇの場合」
「酷いなぁ。どう言う目で人を見てるんだ」
「こういう目だよ」
「自分がそうだからってボクもそうだって決めつけないで貰いたいな」
「はぁ?なんでオレだよ?!」
「ボクが何も知らないとでも思っているのか?」
「な、何がだよ!」
「言わなくてもよーく分かってると思うけどね。それとも、はっきり言って欲しい?」
「……そ、それは……っつーか!オレの事じゃねぇだろ!てめぇの事だよ!」
「自分が都合悪くなるとすぐ吠える。全く可愛げのない犬だね君は」
「犬言うな!犯すぞこの野郎!」
「今更な事を言われてもちっとも怖くないよ」
「……くっそ、むかつく!!」
「まぁ、それはどうでもいいんだけど」
「いいのかよ」
「昨日は本当に何もしてないよ。昨日はね」
「強調すんな。つーか普段はしてんじゃねぇか」
「仕事上必要ならね」
「そんなもん必要な仕事なんてねぇだろ」
「それこそ大人の都合って奴だよ」
「黙れガキ。てめぇ、幾つだよ」
「あれ、知らなかったっけ?」
「イライラするからとぼけたフリすんな!」
「ところで、君は何をそんなに怒ってるの?」
「あ?」
「だから、ボクが昨日ホテルの裏に女性といた事でどうして君が怒る訳?関係ないじゃないか」
「!……や、そりゃそうだけど」
「もしかして君、嫉妬とかしちゃってるんだ?」
「嫉妬!?ば、馬鹿言ってんじゃねぇよ気色悪い!なんでオレがてめぇの淫行に嫉妬しなきゃな……」
「だって、そうじゃないと怒る理由が分からないよ」
「…………っ」
「それに隣町のホテルとか、どうして知ってるんだよ。ボクは君にいちいち自分の行動を報告なんてしてないけど?」
「バ、バイトで通りかかったんだよ!」
「へぇ?童実野公園前のコンビニ勤務の君が隣町のホテル裏まで出かける用事なんてあるんだ?アルバイトで」
「………………」
「墓穴掘ったね」
「うるせぇ」
「君も素直じゃないなぁ。たった一言言えばいいじゃないか。嫉妬するから浮気するなって」
「誰が言うか!大体オレら付き合ってねーし!」
「ふーん。じゃあ君には何も文句を言う筋合いはないよね?」
「……けどよ」
「けど、何?」
「………………」
「言われるまではやめないよ?友達でも恋人でもない、城之内くん?」
「ダチでも恋人……でもないんなら、何なんだよ」
「なんだろう?セックスフレンド?」
「……うわ、気持ち悪ぃ」
「それが嫌なら自分で名前を付けてみなよ」
「……名前って」
「君が決めないんならボクが勝手に決めるけど」
「何に」
「さぁ。何がいい?取り敢えず『好きだよ』って言える関係って言いたいけど」
「嘘吐け」
「嘘吐きはどっちかな」
「…………もう、浮気すんな」
「言う順番が逆だと思うよ。その先に言う事があるだろう?」
「絶対言わねぇ」
「じゃあ聞かない」
「てめぇ!!」
「君って結構可愛いね」
「言っとけ変態」

04.Jealousy