Act8 スキンシップがすこしはげしいです

 着替える為に、Tシャツを脱いだら肩にピリッと痛みが走った。慌ててそこをみるとなんか凄い傷が出来てて、シャツの裏にまで血が付いてる。なんだこれ、と思うより先に視界に入る色んな傷痕。あちこちに微妙な鈍痛。あれー?オレ昨日喧嘩なんかしたっけか?なんて首を傾げた途端、自分の声じゃない声が先にそれを口にする。

「うおっ、城之内!すげぇなその傷。久しぶりに大暴れでもしたのか?」
「ん?あーオレも今ちょっと考えてたとこ。最近物忘れが激しくて」
「お歳ですねー大丈夫でちゅか?」
「……馬鹿にしてんだろ」
「当然だろ」
「てめーぶっ殺す!」
「はいはい暴れない暴れない。最近海馬くんに構って貰えなくて欲求不満なんですか?今度はどこだっけ?アメリカ?ヨーロッパ?」
「おあいにく様!昨日ちゃーんと帰って来てくれましたよーだ!」
「んじゃーラブラブハッピーって事じゃねぇか。オレに当たんなよ」
「当たってねぇよ!」
「ちょっとうるさいわね二人とも!喧嘩なら外でやりなさいよ!埃が立つでしょ!!」
「ほらみろ、杏子ねーちゃんに怒られただろうが」
「オレのせいじゃねぇ!」

 ったくこのとんがり頭マジウゼェ!!

 そう言って、やけに絡んでくる本田を足で押しのけながらオレは次の体育の為に机の上に放り投げていた指定のシャツと短パンを手に取った。周りに女子が居ようが関係ねぇ。最も、男の着替えにキャーキャー騒ぐような女子もここにはいねぇけど。あ、一部例外がいるか。御伽とか獏良とか、海馬とかが着替える時。……なんかイラッとするんですけど。

「…………あれ」

 連日屋上のコンクリの上に直座りしていた所為で、微妙に薄汚れた紺色のズボンを脱ぎ捨てると、太腿の内側にも妙な引っ掻き傷みたいなものが現れた。……ちょ、なんでこんなとこにこんなモノが……!喧嘩でこんなとこに傷つくか?え!?何!?

 と、オレがトランクス丸出しのまま暫しパニクっていたその時、丁度オレの斜め前に座ってシュークリームを頬張っていた獏良がのんびりと口を開いた。

「城之内くん達って、結構激しいよねぇ。やっぱり二人とも男の子だからかなぁ」
「……は?何が?」
「だって、それってエッチの跡でしょ?」
「!!……ちょ!!」
「違うの〜?」
「お、なんだなんだ?真昼間っからエロ系か?」
「……ち、違うって言うか……っだー!!お前は首突っ込んでくんな本田!!」
「まあまあ。あーそう言われてみっと結構際どいところばっかりで。てかなんで歯形があるんだよ。お前、海馬に食われたのか?そういやこの間ナニも噛まれてたよな確か」
「う、煩い煩いっ!セクハラ禁止だてめぇら!オレに触んなっ!」
「自分から見せておいて見るだの触るなだの我儘な奴だよなー」
「城之内くんのエッチぃ」
「お前の所為だろうがッ!!」

 そ、そうだった、そうだったっ!!昨日は海馬くんと仲良くしたんだった!ちょっと時間開いて久しぶりだからって色々やったら、最初はまぁ良かったんだけど、途中から思いっきり抵抗されて、それでもオレが粘ったもんだから最後にはセックスっつーよりプロレス技の応酬みたいになっちまって散々だったんだ。思いだした!

 ……シャワー浴びた時もなんかあちこち痛いなぁと思ってたけど、こんなにしっかり報復されていたなんて気付かなかった。これは酷い。……まぁこれもスキンシップの一部なんだけど、何から何まで激し過ぎるんだよあいつはッ!お前はライオンか?!

 ……って自称ライオンでした。うん。

「ったくお前等はなー。もうちょっとこうお上品に出来ないもんかね」
「セックスに上品もクソもあるかよ!」
「喧嘩よりもひでーぞそれ」
「これは愛情表現なんですー」
「激しいな」
「羨ましいだろ」
「全然」
「ま、しょーがないよな。猛獣愛好家だもんな、城之内くんは。せいぜい餌にされないように気をつけな」
「……多分、もう遅いと思います」
「ご愁傷様」
「だああああむかつくー!!」

 なんかもう段々ムカっ腹立って来た!!あんにゃろー!次回はぜってぇ泣かせてやるッ!!って昨日もある意味泣かせたけど!!だから報復受けたんだけど!!

 まぁ、海馬くんを恋人にしてる時点で覚悟はしてたんですけどね……予想は遙かに上回りましたけど。

「ある意味ラブラブだな。羨ましい羨ましい」
「黙らっしゃい!」
 

 ……奴とのスキンシップは注意が必要です。
 

 ていうか、やりすぎないようにしましょう。何事も。